八味地黄丸(はちみじおうがん)

2023年9月30日 | 漢方薬

八味地黄丸(はちみじおうがん)

「腎」のくすり

漢方では、血・気・水がバランスを保って、滞りなく流れることが、正常な体を維持し、崩れると病気になると考えられています。詳しくは、以前のブログ ”自分に合う漢方を見つけられるために知っておきたいこと その② ~ 原因を探る手がかり「気()・血(けつ)・水(すい)」~をご覧ください。

八味地黄丸は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」を増やし、めぐらせる生薬と、体を温める生薬の組み合わせで構成されてます。その為、体を温める効果と、体全体の機能低下を改善する効果があります。

腎気の代表的な方剤で、八味腎気丸あるいは通称で八味丸とも呼ばれます。腎気とは、漢方でいう腎(泌尿生殖器)の働きを高め、元気や精力をつけるという意味です。その腎にはエネルギーを貯蔵する働きがあります。この蓄えられたエネルギーは成長・発育に関わっていて、骨や歯、髪の毛などの発育に使われます。また、生殖機能の成熟や、体の水分の代謝機能の調整も担っています。

「図解 よくわかる東洋医学」 より

漢方界のスーパースター

そんなマルチタスクを担った腎の働きを高めてくれる八味地黄丸は多方面に活躍してくれる漢方界のスーパースターなのですが、腎虚(泌尿生殖器の衰え)をともなう頻尿や軽い尿もれ、残尿感、夜間尿、排尿困難など高齢者によくある症状に用いられることが多いため、おじいちゃん、おばあちゃんのための漢方薬というイメージを持ってらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

具体的には、足腰の痛みやしびれ、腎機能低下にともなう夜間頻尿、性機能低下によく効くのはもちろん、乾燥肌のカユミや湿疹などにも用いられます。特にアレルギー体質改善への手助けになる縁の下の力持ちな漢方薬です。

腎気が不足する「腎虚」の状態にうってつけの漢方薬と言っても過言ではありません。その「腎虚」の状態になると、排泄能力、骨や脳、耳、生殖能力、髪などの機能がうまく働かなくなり、「排尿・排便異常」をはじめ、「骨の異常や腰痛」、「思考力の低下や物忘れ」、「耳鳴りや聴力低下」、「生殖能力の低下」、「白髪、脱毛」などが起こりやすくなります。このような症状が出始めたら、八味地黄丸を試してみても良いかもしれません。

メンバー紹介

八味地黄丸は、その名が示すよう、主薬の“地黄”を中心に下記の8種類の生薬(メンバー)からなります。

地黄(じおう)には、貧血症状を改善し元気をつける作用があります。
山茱萸(さんしゅゆ)山薬(さんやく)にも滋養強壮作用があり、“地黄”の働きを高めます。
茯苓(ぶくりょう)沢瀉(たくしゃ)は、水分循環をよくする生薬です。
牡丹皮(ぼたんぴ)は漢方でいう「お血(おけつ)」血の滞りを治す生薬で、血行障害を改善し血のめぐりをよくします。

さらに、体をあたため痛みをとる桂皮(けいひ)附子(ぶし)が加わります。これらがいっしょに働くことでよりよい効果を発揮します。

(注:漢方薬は各メンバー(生薬)の相互作用や調和により、より良い効果が生まれるものですので、自己判断で単品のメンバーだけを推す(飲用する)などの誤った推し活はお控えください。)

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