以前、ブログ ”自分に合う漢方を見つけられるために知っておきたいこと その① 〜「 証 」〜” で、「証」とは、”その人の状態(体質・体力・抵抗力・症状の現れ方などの個人差)をあらわす物差しのようなものと表現しましたが、漢方の考え方で物差しとなるのは、これだけではなくまだ他にもあります。それが、「気・血・水」です。
この「気・血・水」は、身体の大事な3つの大黒柱といっても過言ではありません。丈夫な大黒柱に支えられた家屋は、地震や台風に強いのと一緒で、この「気・血・水」がうまく保てていることが、丈夫な身体を作る基礎となります。身体の3本の大黒柱がそれぞれ丈夫だと、気候の変動、疲れ、ウイルス、はたまた人間関係のストレスにさらされても、びくともしない丈夫な身体を築くことができるのです。
では、「気・血・水」とは一体どういったものなのか? それがどうなると身体にどういった影響があるのか1つずつ見ていきましょう。
生命の根源エネルギー「気」
西洋医学でいう自律神経や内分泌(ホルモン)の働きと考えて良いと思います。
・気虚 = 気が不足している状態。元気のない状態です。
疲労感、食欲不振、免疫力低下などが現れます。
・気鬱(気滞)= 気が停滞するしている状態。
喉のつまり、胸のつかえ、憂うつ、イライラ、むかつき、生理不順が現れます。
・気逆 = 気が逆流している状態。
頭痛、めまい、動悸、冷え、のぼせなどが現れます。
栄養をめぐらせる赤い流れ「血」
全身に栄養分を運ぶ流れのことです。西洋医学で言う血液と同等な考えです。
血液のように、全身に酸素や栄養を運んだり、ホルモンバランスを調整します。
(「血の道症」という言葉を聞いたことがありませんか? 日本の漢方では生理不順から更年期障害にいたるまで婦人科系は全部この「血の道症」で一括りにされています。女性のトラブルと切っても切れないのがこの「血」です。)
・血虚 = 血が不足している状態。
最近、特に女性でこの状態の方を多く拝見します。不必要だったり過度な食事制限が原因のようです。
疲労感、めまい、顔色が悪い、肌荒れ、抜け毛、白髪、眼精疲労、不安感、不眠などが現れます。
・瘀血(おけつ)= 血が停滞している状態です。
肩凝り、頭痛、腰痛、色素沈着、皮下出血やあざができやすい、目の周りのクマ、生理不順、不正性器出血などが現れます。
潤いをもたらす透明な流れ「水」
水ではなく津(しん)と呼ぶこともあります。血液以外の体液のことで、鼻水や尿、リンパ液といった体の中のあらゆる水分を指し、代謝や免疫に関わっています。人間の体は60~70%が水分ですからあらゆる組織に満ちている大切な要素です。
・津虚(水虚)= 水が不足している状態。
喉の渇き、肌の乾燥、尿量減少、便秘などが現れます。
・水毒(水滞)= 水が停滞している状態。
気圧性の頭痛、めまい、動悸、むくみ、胃もたれ、湿疹、関節の鈍痛などが現れます。
この「気・血・水」は、自動車が走る仕組みに似ています。「血」はガソリン、「水」は熱を冷やすラジエーター(エンジンの冷却装置)の水、「気」は自動車を操る運転手です。
いかがでしたでしょうか。「気・血・水」それぞれが全て大切な役割を持っていることがお分かりいただけましたか?自分の身体、ご家族の身体の状態をみるときに、証の考え方、気・血・水の考え方を踏まえてみれるだけでも、症状を早く抑えるだけでなく、根本的な身体改善に繋がると思うのです。
また、様々なストレスに見舞われたとき、「気・血・水」のどれに影響が出やすいか、そして滞ってしまうのか?不足してしまうのか?それは、その人それぞれ。人それぞれの身体のクセだったり、生活習慣、環境から影響を受けています。それらに対する養生法や漢方薬については、また別の機会にご説明したいと思います。
あなたは、身体のバランスを崩すとき、「気・血・水」どこに出やすいタイプですか?
まずは、自分のクセを見つけてみましょう。