自分に合う漢方を見つけられるために知っておきたいこと その① 〜「 証 」〜

2023年3月4日 | 漢方薬

漢方学と中医学って違うの?

以前、ブログ 補い合う東西の医学” の最後の方で少しだけ触れましたが、漢方学とは日本伝統の医学です。中国の伝統医学(中医学)が日本に渡り、日本人に合うように姿・形を変えたものです。漢方というと、日本古来の漢方学と、中国伝統医学の中医学がごちゃ混ぜに語られることが多いですが、厳密に言うと、違う学問です。

そもそも「証」って何?

「証」とは、分かりやすくいうと、”その人の状態(体質・体力・抵抗力・症状の現れ方などの個人差)をあらわす物差し”のようなものです。本人が訴える症状や、体質・体格等によって証を判断します。

「証」の分け方「虚」と「実」

昨今の漢方ブームにて、「虚」と「実」という言葉を雑誌やSNS等で見かけることがよくあります。そこで説明されている「虚」と「実」は日本古来の漢方学での概念ではなく、中医学での概念のことが多いように感じます。

日本古来の漢方学での概念では、その人の体質に焦点を当て、病気を跳ね返す力がある状態を「実証」、跳ね返す力が弱っている状態を「虚証」、そのどちらも持ち合わせている「中間証」の3つに分けて考えます。

それに比べ中医学の概念では、病いの原因、強さに焦点を当てており、体力・免疫力の不足によって、身体が弱り抵抗力が落ちていることを「虚証」といい、体力・免疫力は足りているけれど病いの力が大きい為に体に不調がある状態を「実証」といいます。

また、使用する生薬も違います。同じ名前の生薬でも中医で使われるものと、漢方で使われるものでは植物の遺伝子が違っていたり、同じ植物の同じ部位でも処理の仕方(蒸したり、干したりなど)が違う為に、効き方や副作用の出かたが違うとされてます。

pharmacareでは、より日本人に合うよう日本古来の漢方薬をお勧めしてます。

漢方学と中医学の違い
中医学(中国) 漢方学(日本)
理論 中国医学の歴史を踏まえて、近代に体系付けられた。 古典「傷寒論」「金匱要略」における考え方を基本とする。
使用する薬 「中薬」と呼ばれる。古代から現代までの処方を基本に、患者に応じて処方を組み立てる。 「漢方薬」と呼ばれる。古代から清代までの優良処方と日本で創製·変方した優良処方を基本に用いる。

基本の体質を表す「虚証」「実証」

皆さんは、「虚証」「実証」どちらでしょうか?

虚証

✔︎ 骨格が華奢
✔︎ 青白いか黄色っぽい顔色
✔︎ 寒がりで汗をかきにくい
✔︎ 食が細く、便秘しやすい
✔︎ 小さく弱々しい声
✔︎ 消極的で静かな動作
✔︎ くよくよして落ち込みやすい

実証

✔︎ 骨格がガッチリしている
✔︎ やや赤ら顔
✔︎ 暑がりで汗をかきやすい
✔︎ 胃腸は丈夫だが、下痢をしやすい
✔︎ 強くてよく通る声
✔︎ 積極的で活発に動く
✔︎ 情緒が安定している

当てはまるものが多い方がご自分の「証」ということになりますが、どちらか一方ではなく、混じり合っていると考えた方が自然です。特に女性は人生に幾度も体質が変わるポイントがありますし、歳をとれば誰だって弱ってきますから「証」も一生同じではありません。漢方では、例えば同じ頭痛を緩和する目的でも「証」に合わせて違う生薬を選んだり、組み合わせを変えたり、配合量を調整したりします。それは、その人の体質を細かく見て、「証」を見分け、その人にあった漢方薬を選択するためです。これぞ森を見ながら木を育てる方法です。洋服で言えば、既製服ではなくその人に合わせて作られたオーダーメイドの服なのです。

このような漢方薬を”自分で選んで飲んでいく”ことは、とても難しいことのように感じるかもしれません。

もちろん、漢方医や漢方薬剤師に証を見立ててもらうのも良いですが、漢方薬を自分で選んでセルフメディケーションできるようになると、自ずとその時その時の自分と対話できるようになり、自分にとってのベストな養生法が見えてくるでしょう。

 

まずは、”自分を知る”ここから始めてみませんか?

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